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勝手に借りてしまったエプロンは、白のフリルが満載で確かに女性の方が似合うかもしれない。
でも丁寧な刺繍とか生地とか、いろいろこだわっていて綺麗で高級そうなこのエプロンは私には似合わない気がする。
私ならピンクとかキャラクターものとか、子どもっぽいのが似合う気が。
「これ、家が無くなるときに唯一持ち出せたものなんだよね。母親の形見はいいよって。後のモノは思い出したら行けないし忘れた方がいいからって全部消えたし」
「ええええ。お母さんの形見なの? ごめんなさい」
そんな大切なものを勝手に着てしまったんだ。
すぐに脱ごうとしたけど、首を振られた。
「いいよ。俺が生まれてすぐに亡くなったらしくて、写真でしか見たことがない人だし。流伽が着てくれた方が俺は嬉しい」
「……一慶さんってとても苦労されてるのに、尖ってないし優しいし。一慶さんの方が天使なんじゃないでしょうか」
温めたスープをテーブルに置きながら素直な気持ちを伝えたのに、テーブルの上で突っ伏して死んでいた。
「一慶さん!?」
「……し、死ぬ。幸せすぎて……ううっ」
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