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それなのに。
「うー……」
夜中になると、滑車を回す音は響く。
夜行性のハムスターの習性みたいに、夜にも筋トレをしてるんだろうけど、私には回し車を回すハムスターにしか見えない。
でも閉所が苦手な彼がドアをあけて筋トレをするので、私の部屋にも聞えてくるのであった。
注意するべきか、でも体を鍛えるのが彼の仕事なので見守るべきか。
答えがでないために、今日も私は寝不足なのである。
***
一河は未だに亜里沙先輩が人魚に見えるらしい。
私もルームシェアしてるが、一慶さんはハムスターのまま。
水咲に聞いても『私には関係ない』と相手からどう見られているのかはもう興味がないらしい。
私も、恋愛云々を抜きにすれば一慶さんは嫌いじゃない。
テンションについていけない部分は多々あるけれど、だ。
「流伽ちゃん」
「孔一くん」
そして学園のアイドルだと思っていた孔一くんがちょっとだけ嫌いになった。
こんなに爽やかで格好いいし、少女漫画の中から抜け出した理想の恋愛結婚相手だったのに。
放課後のまばらになった教室で、こんなイケメンに声をかけられたらきっと嬉しいはずなのに。
「どうしたの?」
「流伽ちゃんが週末の吾妻プロレスを見に行くって聞いたから」
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