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つまり。
ハムスターに見える彼を、ハムスターとして認識しつつも、いい場所をみつけて、自分の力で見えるようにしないといけないってこと?
魔法は?
何か呪文や魔法や特効薬はないの?
「仲人さん、俺は彼女がハムスターの姿の俺でもいいと言ってくれるなら、真実の姿は見えなくてもいいです」
ハムスターがたぶん立ち上がったのだと思う。とてとてと二足歩行で仲人さんに近づき、見上げている。
「逆に現実の俺を知らなくてもいい。ハムスターとしてペットみたいな存在でもいい。形や名前はいらないから、そばに居られるならなんでもいいです」
そして、私をじっと見る。どんな表情でどんな感情なのか私には映らないのに必死で私の目を見上げてきた。
「俺には、流伽が流伽に見えるよ」
「え?」
「俺を助けてくれた、小さな可愛い女の子が――こんなに素敵になってるとは……俺、死ななくて良かったなって」
俺を助けてくれた?
花巻一慶?
死ななくて良かった?
すべての言葉を並べても、私には何一つ真実が見えてこなかった。
「流伽の理想の王子様になれなかったのは残念だったけど、でも俺は流伽がいい。我儘でごめんな」
気障ったらしいハムスターは、ははっと力なく笑うと、トボトボ体育倉庫から出て行こうとする。
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