189人が本棚に入れています
本棚に追加
/212ページ
二、俺の話を、俺の話を、俺の話を聞けええええい(イエイ
*
『ママ、あのこ、いたいいたいされてる』
『え? どの子?』
『いたいいたいってないてる』
お母さんの表情がくしゃっと歪んだ。何かに感づいたらしい。
『本当にあの子? あの子、見た目もふっくらしているしブランド物の服を着ているし、清潔そうよ。本当?』
母は何度が私に聞いたので、私も頷いた。
『あのね、わたし、みたの。うごかないイシみたいだった。うごいたらだめって。あのこ、うちのこにしたらダメなの?』
『……ちょっとだけまってて』
『だってこどもがたくさんいたら、ゆうふくなんでしょ。かねもちになれるんでしょ。だったらうちであのこもくらそうよ』
だってあのこ、くるしそうにいきてるよ。
私は言われるがまま、母と仕事から帰ってきた父を連れて、どこかを歩いていた。
そして私が指さした小さな穴の先を見て、母は泣き崩れた。
私は意味が分からず、首を傾げると父が私の目を押さえた。
『忘れなさい。見てなかった。いいね。るかはなにもみていない。いいね』
何度も洗脳するように父が言うので、頷いて帰ろうって言った。
でも油断した父からすり抜けて、私は再び穴を覗いた。
『きゃあああああああっ』
真っ赤。真っ赤。赤い部屋。
赤い部屋、泣く母、電話をする父、発狂した私。
真っ赤な部屋の真ん中で腕を押さえて泣いている男の子がいた。
最初のコメントを投稿しよう!