親日な台湾

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この工事中、関東大震災が起こりました。 その影響で、ダム工事への補助金も大きく削られ、八田は職員、作業員の半数を解雇せざるを得なくなりました。 苦楽を共にしてきた仲間を解雇することは、八田にとって身を切られる思いであったに違いありません。 台湾の作業員たちは「自分達から首を切られるのでは?」と心配したそうです。 しかし、八田は日本人から解雇していきました。 台湾人作業員達は驚き、なぜ自分たちを優遇して残したのか、その理由を尋ねると、八田はこう答えました。 「当然ですよ。 将来このダムを使うのは君たちなんですから」 日本人は、日本でも仕事ができる。 台湾人は、この地でずっと生きていく。 自分たちのダムは自分たちで造ってほしい。 というのが八田の思いでした。 台湾の作業員達は、八田を心から信頼するようになったそうです。 八田は解雇者の再就職先を探すため総督府のつてをたどったり、業者の縁故を頼って奔走しました。 見つけた斡旋先には、工事が再開されれば、優先して再雇用するという条件をつけたそうです。
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