【 自覚 】

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【 自覚 】

 微かに聞こえてくるカイルの寝息に、詰めていた息をそっと吐き出した。 「ヤッベー…」  誰にも聞かれないように、こっそり吐息する。  いつもカイルがアランに向ける表情といえば、哀しいような淋しいような、泣き出してしまいそうな暗い顔ばかりだった。二人で買い出しに行ったあとは眉間に皺を寄せた厳しい表情が加わったが、全て負の表情ばかりだった。突然今日になっていきなり変わった。  多分、セージが変えたんだろうなと思うと、僅かばかりの嫉妬が生まれる。大きく口を開けて笑ったり、拗ねたり。特にアランに対する表情に大きな変化が加わった。  ふわっと淡く微笑む。目を細め、口許が微かに緩む。  誘われてんのか?と勘違いしそうな、不思議に甘い雰囲気を醸し出すのだ。 (まだ心臓バクバクいってるし)  あんなものを間近で見せられて、驚かない奴はいないだろう。 (押し倒さねぇでいられたなんて、俺ってエラくね?うん、エライ!)  褒められた衝動ではないが、誰にも言えない衝動で、誰も褒めてくれないから自分で自分を褒めておいた。     
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