赤い月。

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 ウインクする淦の後ろからワンプレートの「夕食」を陽咲の目の前に置く。一緒にマグカップにシジミの味噌汁が置かれた。 「夕食セットおまちどぉさん」 「いただきます……っ」  いつだったか、あまりに顔色の悪い陽咲を見かねた白埜が「俺のおさんどんが食えんいうんか?」とはば脅しながら食事を提供したのがキッカケで夕食セットというものが生まれた。  モクモクと幸せそうに噛み締める陽咲に思わず頬が緩む。 「ほん(本当)に、美味しそうに食べるなぁ」 「おいしいですから!」  温かい食事は大切だ。  生きていると実感するし、身体が元気になる。 「採血も注射も嫌いだけど頑張れそうですー」 「定期的にやってるけど何でって聞いていいの?」 「いいですよー。小さい頃からなんですけど、先天的に病気があるそうで……聞いてもよくわかんなかったんですけど。それの抑制と進行してないかを確認する為の注射と採血だって聞きました」  お味噌汁も飲み干して「ごちそうさまでした」と手を合わせる。 「でも、最近は白埜さんのご飯食べて、マスターとお話してるので元気になります!」  満面の笑顔で答えた陽咲は代金を置いて帰っていった。
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