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違う曲が聞きたい、とレコードの前で悩む淦に白埜が声をかけた。
「淦は、紅いお月さん以外の色をしっとるか?」
「……しらねぇ」
選曲が決まりレコードを変えながら淦は答える。
「ただ、俺は「紅い月」は凶兆だと教わった。古い迷信だと思う」
この街の普通という違和感を幼少から抱えていた淦は白埜を見つめた。
「お前は、この街をどう思う」
「……普通やないんか?まぁ、言い知れん何かの思惑があるとしても俺は気にせぇへんよ」
ペティナイフでオレンジを切りフルーツフォークと共に淦に出した。
「世界の秩序も思想もぜぇんぶ、どっかの誰かの思惑で策でしかないやろ」
にんまり笑った白埜に、そうだな。と同意した。
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