第三章 虚構と現実

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「よーし!これで一段と可愛くなったわね!」  半ば強制的にリヒトにワンピースを着せたお母さんは、満足げに頷いた。  リヒトの方はというと、精神的に疲れ切ったのかぐだ~とフローリングの床にうつ伏せになりグッタリとしている。  ちょっと可哀想だと思ったが、とりあえずこれで私の精神的安寧は守られた。 「リヒト、ごめんね……。後でちゃんと男の子らしい服着せてあげるからね」  そうつぶやき、彼の頭の毛をモフモフする。  私にとって数少ない貴重なモフりゾーン。  いつもなら頭を撫でられるのを嫌がるのに、今は疲れ切っているのかわずらわしそうにコチラを黒い瞳で見つめるだけ。  そのとき、お腹の虫がぐぅぅと空腹を知らせてきた。 「あ!千穂お腹すいたでしょ?夕飯の準備はもう出来てるから」  いつになく楽しそうな様子のお母さんが、パタパタと台所の方へ向かっていく。
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