第三章 虚構と現実

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「そう言えば、千穂はこの子と一緒に部屋で眠るの?」 「うーん、そうだね。これからは私の部屋で一緒に寝ることにするよ」  もし犬を飼ったら一緒の部屋で眠るのが私の夢だった。  その犬がまさか人型だとは思わなかったが。 「えっ……、千穂そいつと同じ部屋で寝るのか。寝ている間にまた噛みつかれるかもしれないし、庭でいいんじゃないのか庭で」  今どき犬を庭で寝せるって……。ウチの父もいい加減そのカビがもさもさと生えた古い価値観を何とかしてほしい。  私以外の人間の声は正確に理解できていない様子のリヒトだが、何となく父の言葉の意味が伝わったのか、微妙に敵意のこもった目で睨んでいる。 「もー!リヒトを庭で寝かせる訳ないでしょ!それにもう、この子は私のこと噛まないから!」  ……たぶん。
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