第三章 虚構と現実

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「確かに脱衣所でうずくまっているのを見たときは何事かと思ったけど……保健所に犬を迎えに行って疲れちゃっただけじゃない?ほら、あそこはあまり楽しい場所とは言えないから」 「……確かに千穂は昔から犬が好きだったからな。基本的に犬が殺処分されるあの場所はあいつにとってショックだったかもしれない」 「でもペットショップじゃなくて保護犬を引き取りたいって言ったのもあの子だったしね……。あの子、昔から変に正義感というか、我が強いとこがあるのよ」 「正義感が強いのは悪いことじゃないんだけどな。千穂、小さい頃は犬以外にもヒーローもののアニメとか特撮が大好きだったし」 「それはあなたが男の子に見せるようなアニメをあの子に見せたからでしょ……。おかげで小さい頃は私が買ってあげた可愛い服をあまり着たがらなくて苦労したのに……」 「別に女の子がそれらしく可愛い服を着なきゃならないなんて決まりはないだろ」 「まあ、それはそうだけど……」 「とにかく、犬は最近学校から帰ると無表情で元気が無かった千穂のために飼ったんだ。もし、逆に千穂の様子がますますおかしくなるようであれば、また保健所に連れ戻す可能性もあるからな」
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