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印象よりはるかに背が高く、痩せているはずなのに、なんというか、大きい。なにか迫るものがある。
勇気をふりしぼる。
「あの、なんなんです?毎日こちらを見ているようで気になって仕方ないのですが。窓際になにかテレビでもあるのか、それにしても視線が、覗かれているようで……やめてほしいんですけど!」
女は、しばらく無言で私を見下ろしていた。気まずい時間――しかしやがて、彼女はぺこりと頭を下げた。
「ごめんなさい、実は、末の娘にあなたがよく似て見えまして……。……事故で死んでしまって、もう会えないものですから」
「死……」
「どうしても娘に会いたくて……それでつい、あなたに目を奪われてしまって。ご迷惑をおかけしました」
素直に謝る女性。そんなことを聞いてしまえば、もう批判できない。
「それは、お悔やみ申し上げます。……あの、じゃあこれからも見るのはかまいません、けどいっそ、声をかけてくださいな」
「まあ、いいのですか?」
「ええ。仲良くしましょう。隣同士ですもの」
女は嬉しそうに笑い、自分の家へと入っていった。
私も帰宅して、母親にその話をした。
「正直気持ち悪いけど、可哀想だしご近所だし仕方ないよね」
母は怪訝な顔をした。
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