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「……お隣さん? たしかに、あなたくらいの子がいたと思うけど……もう引っ越してしまったわよ。もう十年も前に」
「えっ? ……いや、違うでしょ。事故でなくなったって」
「それはご家族のほう。両親とおねえちゃんの三人が亡くなって、末っ子は遠方に引き取られていったの。今はもう、隣は空き家」
私は部屋に戻り、眠れぬ夜を過ごす。分厚いカーテンの向こうに視線を感じる。
と、コツコツ、ガラスを爪で叩く音がした。
コツコツ、コツコツ。
「こんばんは。お言葉に甘えて話しかけにまいりました。カーテンを開けてください」
声は男女と少女の3人分。
私は窓に近寄れず、しかし部屋から出ることもできなくて、コツコツ、コツコツと、少しずつ焦れてくる隣人たちの爪音を聞いていた。
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