隣人

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隣人

 自室のカーテンを開けてみると、お隣さんと目があった。 「あっ……」  しまった、そうだ、この部屋はお隣さんと近すぎる――そのことをすっかり忘れていた。  おなじ二階建てなのだろう、お隣さんの部屋窓は、私の部屋と向かい合うようにしてついていた。カーテンを開けると、お互いに部屋の中が見えるのだ。  この古い家が建ったのは、建蔽率も改善される前のこと。こういうことを気にもしなかったのだろう。だが嫁に来た母は嫌がって、カーテンを閉めておきなさいと口うるさく言われていた。  どうせ隣家の陰になり、日も差さないので、何年もカーテンを引きっぱなしである。  隣人とは、初めて対面した。  髪の長い女だった。  三十がらみで、やせた女。  窓際にあるデスクの椅子に腰掛けているらしい、体は横向きで顔だけこちらを見ていた。  私はやや気まずく、ペコリと挨拶をしてカーテンを閉めた。  夜になり、ふと気になって、そっとまたカーテンを開けてみた。  あちらの部屋に、女がこちらを向いて座っていた。わざわざ椅子を引いて、完全にこちらを観察するべく位置についている。なにを主張するでもなく、ただじっと見ていた。     
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