chapter.4
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chapter.4

 悪趣味だ、と僕は思った。僕たちの前で、飯田に自殺させるなんて。  飯田は呆然と立ち尽くしていた。床に転がるナイフを、ぼんやりと見つめている。 『早くしてくださいね、飯田くん』  声が急かす。飯田は、びくりと身体を震わせ、それから、ナイフの方へと歩み寄っていった。 「なにが欲しい?」  声を上げたのは、淵川だった。 「どうすれば、この馬鹿げたゲームを終わらせられるんだ?」  淵川さんは、どうやら、最年長としての自覚に目覚めつつあるようだった。 『難しい問いですね。まあ、あなた方の「生きたい」という意思が重要になってくるんじゃないでしょうかね』  声は投げ遣りだった。お前たちの命なんてどうでもいい、とでも言いたげだった。  その時、甲高い悲鳴が上がった。  声の方を見ると、飯田が、渡辺の髪の毛を鷲掴みにしていた。もう片方の手には、ナイフが握られている。 「飯田!」  勝俣さんが怒号を飛ばす。 「た、助けて」  渡辺は、か細い声でそう言った。 「飯田、お、お前、正気かよ」  菅野が震えた声を出す。 『飯田くん。君、一体、なにをしているんですか?』  声は至って冷静だった。まるで、この状況を楽しんでいるみたいだった。 「なあ。お前に、相談があるんだ」  飯田は、頬に卑屈な笑みを浮かべていた。額は汗ばんでいる。 『なんでしょうか』 「俺の代わりに、こいつを生贄・・にする。だから、俺のことは生かしてくれ」 「最低」  武藤氏が、呟くように言った。 「飯田。渡辺さんには罪はない」  僕は言った。 「それは、俺だって同じだろうが」  飯田が反論する。 「なあ、いいだろ? 俺には、生きようという意思がある。それに、ルールなんてお前次第でいくらでも変更できるんだろ? だったら、こうしてくれよ。このゲームを突破するのに必要なのは、一人分の命。それ以外のルールは、意味を持たない、ってな」 「ふざけんな! 死ね、死ねっ、あんたが死ねっ! 選ばれたのはあんただ! 淵川さんを犠牲にしようとしたのだってあんたじゃん!」
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