chapter.3
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chapter.3

 この部屋に、ドアはない。だから、もし僕たちがこれから死ぬのだとしても、どのようにして脱出すればいいのか、僕には分からなかった。 『淵川さん』  声が再び、喋り始めた。『淵川さんの寝ていたベッドの下に、引き出しがあります。開けてみてください』  淵川は不機嫌な面持ちで、ベッドに歩み寄り、引き出しを開けた。 「紙とペンだ」  ぶっきらぼうに、淵川が言う。 『そうです。そこに、これから、この七人のうちの誰かの名前を書いてもらいます』 「名前?」  勝俣さんが訊き返す。 『はい。自分を含む・・・・・、七人のうちの誰かの名前です』 「なんのために?」  武藤氏が尋ねる。 『次の犠牲者を決めるためにです』  僕は、その言葉を上手く認識することはできなかった。犠牲者。 「こいつ、どう考えても正気じゃない」  菅野が吐き捨てるように言った。 『まあ、生贄投票みたいなものです。最も多く票を集めた人が次の犠牲者です』 「ねえ。あんた、こんなことしてただで済むと思ってんの?」  渡辺が声を荒らげた。「あんた、捕まるよ。死刑だよ、死刑」 『ははは。まあ、これが明るみに出たら、間違いなく死刑でしょう。でも、一体誰があなたたちがここにいるなんて気づいてくれますか? 私が、なにも考えていないとでも?』  不敵な、相変わらず傲慢な口調だった。演技がかってすらいた。 『あなた方は、謎の行方不明者として処理されて、それで終わりですよ』 「警察舐めんなよ」  飯田が抵抗する。僕には、まだ、どちらの言い分が正しいのか、判断することはできなかった。声は、確かに自信に満ちている。しかしむしろ、だからこそ、それがはったりであるという可能性も否定できなかった。無理に自信満々に振る舞っている、と言えなくもない気はする。 「なあ。お前、本当に、なにがしたいんだ?」  淵川が、落ち着いた口調で言った。どこか父性的ですらあった。小さな子どもをたしなめるような。そして、実際に声の主は、かなりのガキ・・だった。
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