プロローグ

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 暗い橙色の照明に照らされたトンネルの中央付近で横倒しになったバスは運転手の席から炎上していた。運転手は頭から血を流しぐったりし意識がなかったようだった。無論、そのバスにはお姉ちゃんと私が乗っていた。  私とお姉ちゃんは一番最初にバスに乗り込んだこともあって、最後尾の席に自然と座ったものだから、頭とか額に打撲らしい怪我で済んだ。他の乗客たちはこの事故を察知したかのように例のあの謎すぎる黒ずくめの男三人以外を残してはトンネルに入る一歩手前の駅に下車していたのだった。  そもそもこの事故そのものがおかしいのだ。運転手の運転は不自然な様子などまったく感じられなかった。なのにトンネル内で事故を起こしてしまった。何故なのだろうか。    事故の真実を知ることができたのは、後日のことだった。  私とお姉ちゃんは炎上するバスの光景をぼんやりとした意識のなかで映画のワンシーンを眺めるような心境でぐったりしていた時だった。逃げようにも出入り口は閉じられ塞がったままで、身体のほうも力が入らなかった。  それだけではなかった。炎上し、今にも爆発起こしそうな横転したバスを取り囲むように何処からかやってきた影よりも濃い闇の人間の形をした存在の集団がのらりくらりっとやってきた。     
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