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その存在たちは飛び出さんばかりにひとつの眼球をはみ出させては白い上下の歯を激しく?み鳴らしていた。その音は何重にも重なるため、トンネル内に地震のように反響し鳴り響いたのだった。まさしくその音は醜悪なもの以外なんでもなかった。
お姉ちゃんはその異形な存在を眼にした途端、発狂したかのように叫びだした。すると例の謎の黒ずくめの男三人がそのお姉ちゃんの口を手でではなく、汗拭きタオルのようなもので塞ぎこんでしまった。そして一人だけ私のそばから離れることなく、残りの二人の謎の黒ずくめの男たちがお姉ちゃんを拉致し、横転し炎上したバスから頑丈に造られたはずの窓を一発の拳で叩き割っては出ていってしまった。
「お姉ちゃーー、!!」
拉致されたお姉ちゃんに向かって途絶えかけた朦朧とする意識で、掠れた声からはっきりとした発音の大きな声で、姉を拉致した謎の黒ずくめの男二人を引きとめようとした時、耳元で「心配するな!かならず助けてやる!!」という発言だけをし、みぞおちに容赦などない力で殴っては失神させたのだった。
その後のことはなにも覚えていない。
覚えているとしたら失神するまえに耳元で囁かれた男の人の声が澄みきったような水のように透明感に溢れる若い男性の綺麗な声だということだけだった。
こうして私、七瀬忍姫と姉の七瀬織姫の予想も期待もしない奇想天外な忍者と侍の土地での生活への開幕となったのだった。
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