3505人が本棚に入れています
本棚に追加
/248ページ
誰かの記憶
『---君。良いかい?
君はこれから綾瀬学園に行く。
そこで寮生活を送るんだ。』
おじさんが嫌に優しい笑顔で俺に言う。
寮生活…。って事はもう家には来ない。
つまり俺はお払い箱か。
『こんな事しか出来ないけど、
あともう少し。きっと君が大人になる頃には
玲香(れいか)さんも落ち着くと思うから。』
大人になる頃には俺は遠くに行くよ。
長い間会えないなら愛情は薄れる。
つまり、もう二人とも会うのは
これで終わりだ。
おじさんの半分以下の時間を過ごしていても
わかる。俺は邪魔だからお払い箱にされる。
それならそれで良い。
もうこの生活にはうんざりだ。
もう振り回されるのはうんざりだ。
ーガシャーンッ!
隣の部屋から
いつもの何かが割れた音が聞こえる。
ああ、また暴れてる。
『!!そうゆう訳だから、
君は早く身支度を済ませなさい。
あっちは僕が行くから。良いね?』
焦っているこの人の顔を
見てももう何も感じない。
俺はおじさんににっこりと笑う。
『はい。』
俺の返事はいつもそう。
誰に対してでも。
ああ、消えたい。
最初のコメントを投稿しよう!