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首藤はそんな僕を一目見るなり、僕を描きたいと言ったのだ。その頃の僕は何時死んでやろうかと考えていた位だし、有名な画家のモデルなどと言う大凡普通の高校生では出来ない体験と言う事もあり、二つ返事で承諾した。但し彼は、裸体画を描く画家であった。
しかし最初こそ抵抗があったものの、最近では彼に見詰められる事に快感さえ覚えるようになった。何より首藤は、僕が一番美しく見える時は、悦楽に浸っている瞬間だと言うのだから、どちらにも何ら不都合は無いどころか、より一層僕達の行為は美徳と化した。
首藤の容姿はお世辞にも整っている訳では無い。背だけは目を見張る程大きいのだが、窪んだ二つの瞳は鋭く、そして左右に大きく離れている。鼻も押し潰したような形をしていたし、口だけは女のように小さく窄んでいた。
だが何が僕の気に入ったかと言えば、他でも無い、彼の描く絵だ。退廃の中に息衝く、刹那の美しさ。彼はそれを描く事に関してはやはり天才であった。芸術を志した事の無い僕ですら、彼の描いた絵画と言う精神に初めて触れた時、思わず涙を零した程だ。加えて僕の養父母は彼を甚く気に入っていたから、こんな風に帰らない事があったとしても咎められる事は無かった。そう言う理由もあり、首藤は愛人の中でも取り分けて長く共に過ごす男だった。
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