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「雄蔵、楽しそうだなぁ」
三吉が雪の横で呟く。
「雄蔵は、ああいう男だ。下手に利口じゃないからいいんだよ」
「あはは。雪様、雄蔵にベタぼれだなぁ」
「もちろん。でなきゃ祝言はあげないさ」
三吉と雪が話しているいる内に雄蔵と泰宗の試合は始まっていた。
今度は激しい打ち合い。
「ちょっと前まで棒っ切れを振るっていた小僧には負けんぞ!」
「はは!年寄りの冷や水は腰に悪いぞ!」
お互いに悪態をつきながら、打ち合う雄蔵と泰宗。
雄蔵が力強く泰宗の頭を狙うと泰宗は素手で竹刀を掴み、雄蔵の脇腹を蹴ろうとする。
雄蔵は、その蹴りを腕で受け止めて泰宗の鳩尾に拳を入れようとするが泰宗はそれを素手で受け止める。
ほとんど喧嘩と変わりないが、雄蔵と泰宗は笑顔を浮かべて楽しそうに試合を続ける。
祝言を見に来た民は大いにに沸いた。
汗だくで向かい合う雄蔵と泰宗。
お互いに肩で息をするが、その中、雄蔵が叫ぶ。
「雪ーー!絶対勝つから握り飯を握ってくれ!約束してくれたなら勝てる!」
「いいだろう!だから泰宗様に勝ってしまえーー!」
雄蔵の大声に負けず、雪も大声を出した。
雪と雄蔵の祝言は、決して粛々ではなく、これからの二人を表すかのように賑やかだった。
完
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