この涙は君のもの

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 木崎家にお邪魔して、陽太と二階に上がった。透也はまだリビングでご飯を食べながら親子の会話を楽しんでいる最中みたいだ。  陽太の部屋に入ると、思ったより綺麗だった。昔はわりと散らかっていたのに。 「とりあえずゲームでいい?」 「いいよ。……意外に部屋片付いてんだね」 「意外には余計だ」  テレビの前にクッションを二つ用意して、そのうちのひとつに私は座った。  陽太がテレビをつけてゲームを起動した。画面に映ったのは昔もよくプレイして遊んだレースゲームだった。 「ええーこれ? 私が苦手なやつじゃん」 「美奈はどれをやってもだいたい下手だろ」  陽太は学習机から椅子を寄せてきて座った。 「いやいや、そんなことないでしょ。他のゲームではけっこう活躍してたじゃん」 「それは単なる偶然とか奇跡っしょ。美奈は運だけはやたらあるから」 「運も実力の内だし」  それから二人で久しぶりにゲームに夢中になった。勝ったり負けたりで騒いでいると、途中で透也も部屋に入ってきた。 「二人で何楽しそうにしてんの? あ、それ懐かしい! 俺もやる!」 「言われる前から用意してるっての。透也はそこ座れ。これ、3Pのコントローラー」  透也は私の隣に座った。こんなに距離が近いのも、久しぶりだ。  3人でのゲームはさらに盛り上がった。こうしていると、小さい頃に遊んだ時の感覚が蘇る。あの頃は3人で遊ぶ時間がとても楽しくて、隣の自分の家に帰るのがいつも寂しいと思った。 こんな風に遊んだのはずいぶん久しぶりなのに、自分でも呆れるくらいそれは同じ。ずっとこのままならいいのにと。
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