この涙は君のもの

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 ゲームを初めて一時間半くらい経った頃、少し休憩することになった。 「俺としたことが陽太ならまだしも、美奈にまで負けてしまうとはっ!」 「あの頃の輝きは失われたな、透也」  うなだれる透也の後ろで陽太がニヤリと笑った。 「くっ、俺は今だって輝けるはずなんだ!」  昔と立場が逆転している二人の掛け合いがおかしくて笑った。このゲームは昔、透也が一番上手だったのに、今は少し下手になっていた。 「なんか意外だね。透也ってずっと上のお兄ちゃんて感じだったのに、今こうしてみると前よりそんな上って気がしない」 「それは俺が成長したってこと? それとも、透也が衰えたってこと?」 「衰えたって言うなよ! 俺はまだ23だからな。十分若いんだからな」 「んー、どっちもかな」 「俺が衰えたところは否定してくれないの?」  衰えたと言われて少ししょんぼりしている透也が可愛いかった。  ゲームが下手になったくらい別にいい。でも、現実は違う。透也は先にどんどん大人になっていく。23才と17才は大人と子供くらいの違いなのだ。 「成長したと言えばさ、美奈も昔よりかなり変わったな」 「えっ、どんな風に?」 「まぁ、その、少し大人っぽくなったね」  透也は指で顔をかいて少し照れながら言った。 「昔はこーんな小さくて、陽太と一緒に泥まみれで遊んでたのがついこの前みたいなのにさ、いつの間にかこんな大人っぽくなるなんて、そりゃ俺も歳とるよなーって」  そう言ってもらえて嬉しかった。私も少しは透也に近づけたのかな。 「こいつ、この前も告白されてんだよ。2年になってから3人目」 「ちょっと陽太! そんなこと透也に言わなくても!」  恥ずかしかった。でも、透也がどう思うのかは気になる。ちらりと反応を見てみる。 「えっ、そうなの? ……そっかぁ、美奈はモテるなぁ。こりゃ彼氏ができるのも時間の問題かな」  透也の表情からは驚き以外の感情が無さそうでがっかりした。少しくらい、焦ってくれてもいいのに。 「そんな簡単に付き合うとかできないよ」  これから先も学校でいくら告白されようと、応えるつもりなんてない。 「彼氏欲しいって思わないの?」 「……」  透也からそんな風に聞かれることが心苦しい。
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