この涙は君のもの

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昔は、透也への気持ちは単なる憧れだと思い込んでいた。透也に彼女がいても別にいい。透也は変わらず私と仲良くしてくれるから。そうやって自分の気持ちにフタをしていた。 だが、それまで見ぬ振りをしていた感情はある時一気に溢れ出した。 3年前、私が中学2年生で、透也が大学2年生の時のことだ。透也が交通事故に遭った。夜、バイト帰りに車にはねられた透也はすぐに病院に運ばれて入院した。奇跡的にも打撲や骨折で済んで、頭を少し打ったりもしたが検査で異常は無かった。 私は知らせを聞いてもすぐには駆けつけられなかった。仕方なく次の日を待ったけれど、その日の夜はほとんど眠れなかった。 確かに透也は助かった。今はそれだけで十分だった。でも、透也だっていつかは誰かと結婚する。そしたら私と今みたいな距離でいることはない。たとえ生きていても、いつかは離ればなれになる。 一晩中、そんなことを考えていた。そんなのは嫌だと思った。 私はその時に、この気持ち憧れではなく恋だと認めた。早く透也の顔が見たいと、今までにないくらい強く思った。 透也は大学3年の春に彼女と別れてから、恋人はいない。私にとってそれは嬉しいことではあるけれど、だからといって彼女になれるわけじゃない。  その気は無いんだとわかっていても、私の気持ちは変わらなかった。そんな簡単に、好きでいることを止められない。
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