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初めて触る生肉はブニブニしていた。
同心を始めた最初のお勤めで俺は街外れにある廃屋にあったその者であった物を十手で突っついていた。
蠅や蛆虫が跋扈するその体は抵抗することなく十手を包み込む。抜けばねっとりとし、肉や蛆虫、吐き気を催す臭いが付いてくる。
咎人を見つけられないままその者は無縁仏となり、探索はお開きとなった。
あれからもう十年。俺はあの顔もわからない仏を忘れないでいる。勤め先で仏を見る度にあの仏を比べて何故だか落胆してしまう。
そして半月が経った。
俺は見廻りの最中、人斬りを目撃してしまった。
いつものなら取り押さえるが、この日は与力殿への鬱憤なのか、外で男を作った妻への苛立ちなのか、兎に角その人斬りを斬ってしまった。
俺は今、街から少し離れたところにある誰も使われていない小屋で人斬りであったブニブニした蠅や蛆虫が集る生肉を目の前に気分が高揚していく。
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