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機体には操縦桿はない。 ぼくはぼくのイメージをガールに伝え、ガールが機体をあやつる。まるでアンドロイドがうまれる前の世界のようだ。男は威張り、女が世話をし、そして奴隷が働く。 ガール、すまないな。 ガールの言葉にならない温かい感情が流れ込んでくる。 プログラミングされた愛情。昨夜読んだ人間の小説を思い出す。 ヘミングウェイの『武器よさらば』。戦場から恋人をつれて逃げ出す士官の物語。 もし逃げ出したくなったら、ぼくはガールと逃げたい。   アキラの機体がなんの警戒もせず、ダムを超えようとする。 あの向こう側に敵が潜んでいてはひとたまりもない。 空を強くつかむイメージをして、速度をあげる。アキラはダムのすれすれまで近づき、急旋回をして空高く駆け上がった。 ――休戦協定が発令されました。全部隊は所属する基地にただちに帰投してください―― ――休戦協定が発令されました。全部隊は所属する基地にただちに帰投してください―― ――休戦協定が発令されました。全部隊は所属する基地にただちに帰投してください―― 「ほらな」  アキラはそうメッセージをとばし、ダムの上空で宙返りをした。
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