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Chapter1
「ごきげん麗しゅう」
場の空気が一瞬にして凍り付く。次の瞬間、冒険者組合の1階ロビーに悲鳴が響きわたった。
「嘘だ、なんでドラゴンがこんな場所に……!!」
冒険者達でごったがえしていたロビーの前に、丸で王侯貴族が腰掛けるのに使われているような、美しい装飾を施された玉座が音もなく浮かびあがった。そして、優雅に足を組んで腰を降ろしている龍族の女が音もなく姿を現し、優雅に挨拶の言葉を投げかけたのである。龍といえば基本的に、残虐極まりない性格の持ち主であり、人間を害する魔物の代表各にして最上位、と認識されていた。力にも優れているが魔法にも堪能であり、小指一つ動かすだけで簡単に町が一つ壊滅するとも言われている。
(その腰から下げている剣や槍などはただの飾りなのかしら)
と、龍の女が嫌みの一つでも言おうと口を開きかけた時には、冒険者達でごったがえしていたはずの組合の1階ロビーには人っ子一人いなくなっていた。薄い唇に薄い笑みを浮かべ、形の良い眉をほんの少し寄せて、彼女は呟いた。
「揃いも揃って雁首並べて群れてるくせに、ヒトの男どもって本当に無価値ね、無価値」
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