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あんな見た目なのに、柴犬をアイコンにしてみたり、フリーダイヤルをアカウントに入れてみたり、俺を好きだと言って、時間をかけてよろしくお願いしますと、答えたのだ。
きっと、とても緊張して。
俺のように適当に楽しんでいたのとは違う。
一字一句、考えて、間違わないように、慎重に送信したのだろう。
俺が好きだから。
胸を抑えた。チクチクと、痛む。
ひどいことを言った。
謝らなくては。
──昼休み、直接話せませんか? 体育館の裏で待ってます
LINEを送ってみた。ブロックされているかもしれないと思ったが、既読がつき、直後に「はい」とだけ返ってきた。
怒っているだろうか。怒っているだろう。そりゃ、誰でも怒る。
俺が勝手に間違えただけで、あっちは騙しているつもりはないのに、詐欺だとか騙されたとか言われて、腹が立たないはずがない。
喧嘩で停学。凶暴。鬼。狂犬。
沢村の言葉が蘇る。
俺は半殺しにされるかもしれない。
だから、待ち合わせ場所の体育館の裏で、柴崎を土下座で出迎えた。
「大変っ、申し訳ありませんでしたぁっ! あのっ、実は、……二組の柴崎琴音さんと、四組の柴崎さんを……、思い違い……してて」
無言だ。恐る恐る顔を上げた。鬼の形相を予想していたが、違った。
柴崎は、わかりやすく困った顔をしていた。肩透かしを食らった気分だ。
「お、怒ってます、よね?」
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