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堪えていた美鈴の目から大粒に膨れ上がった涙が一粒落ちた。
次から次へと透明な滴がこぼれ落ちてく。
友達ひとりいない、いじめられてたゆえに誰も近づいてこない毎日は地獄だったろう。
「あれ、なんで涙が。泣きたくなんてないのに。やだ」
笑おうとするのにできない美鈴に胸が詰まるような思いと、ロッカーの脇でクスクス嘲笑っていた人影に怒りがこみ上げた。
無言でそいつらの一番前にいた男の胸ぐらを掴み上げて壁に押しつけた。
「おまえか、これをやったのは」
「だから何だよ。悪いかよ」
男のふたりに女3人。
バツが悪そうに睨み答えたその男の顔を殴ると、美鈴が必死になって腰にしがみついて止めた。
「佑先輩!ダメ!」
「コイツら、おまえを」
ひどいことをしたとも思ってない、美鈴を傷つけたと自覚もない、それが許せなかった。
狼が通りかかり止めると、恐れをなして逃げるように去っていった。
「佑、おまえ……」
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