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「なんで止めた」
あんな奴ら殴って当然だった。それをなんで止めたんだ。
「佑、おまえの後ろにいるあの娘を見ろ。おまえがあいつらを殴れば生徒会長が暴力沙汰だと騒ぎになる。あの娘はそれを望んでやしない」
美鈴を見ると、震える手で俺のシャツの裾をつかんでた。
「俺としては佑があいつらを殴っても良かったんだがな」
狼が後は俺に任せとけと美鈴に話しかけるとそのままどこかへと消えてった。
「良かった…佑先輩がもしもケガしたら…もしも佑先輩までひどい目にあったらって…」
ひっく
俺の心配ばかりする美鈴の目からまたポロポロと涙がこぼれた。
出会った時と同じ透明な涙。
こんなにも優しい美鈴にささくれだっていた気持ちが癒されてく。
「悪かった…おまえを泣かせるつもりなんてなかったんだ、ただ俺は美鈴が傷つけられてたことに腹が立ったんだ。許せなかったんだ」
許せなかった。
美鈴を傷つけたあの連中が。
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