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疑いもなく沙良が手を伸ばしてジャージを受け取ろうとして、
ひょい、
『俺の貸してやるからいい』
沙良の前に片手を広げたのが、狼だった。
「なに?おまえ、ヤキモチなわけ?」
「だったらどうした?」
「ヤキモチやきの男は度を過ぎると嫌われるって知ってるか?沙良には今までもそうしてきたんだ。特別に今日だけってわけじゃない」
人見知りの沙良は他のクラスにジャージを借りにいく友達はいない。
忘れた時はいつも俺が貸してた。
当然、俺が渡そうとして、
「どうした、沙良」
沙良はジャージを受け取らない。
少し頬を赤くして小声で、「狼くんから借りるから…」と、答えた。
「そうか、…わかった」
こんなにショックだと思わなかった。
沙良が狼のものになったと思い知らされる。
ふたりのそばで今までのように接してられると思ってたのに。
突きつけられた現実に打ちのめされる。
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