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「ヤガラミさん、私は先に行くよ!」
「そうして下さい」
次の瞬間、砂嵐と共に、
『ビヌーナス!』
カザカミが飛び立っていった。
「成程。『皆でやれば怖くない』とはよく言ったものだ」
魔法使いに取り囲まれたヒイラギが、こめかみに指を当てて呟いた。
「この人数では敵うまい」
突如として城門前に現れた魔法使いの数は、12人だった。
「よく集めたものだ。ただでさえ魔法使いは数少ないというのに」
城門の裏側には、先程まで自分と一緒に城壁を守っていた兵士達が控えているが、
「出会い頭に炎をぶつけてくるとは、最近の若い者はよほど礼儀を知らないと見える」
その兵士達の半数が、12人の魔法使いの襲撃によって怪我を負わされていた。
(まともに動ける人間が100を切ったか……)
「ヒイラギ・ウィンドワード・アルティス。貴殿を我が主君がお望みだ」
「髭を剃って出直してこい。俺は男にお望みされる趣味はない」
魔法使い達が、慎重に彼との間合いを詰めていく。
「更に、俺は礼儀を知らん奴に拉致されるほど寛大な心も持ち合わせていない」
圧倒的不利でも、鷹揚な態度は崩さない。
「速やかに帰れ。肉体ごと元素に還されたくなければな」
魔法使い達が杖を構えると同時に、音もなく空気が揺れる。
「お前が……」
「『我らが王の下にこれば、その民達に手は出さぬ』、皆まで言わなくても結構だ。戦場での口約束など何の価値もない」
取り付く島もないその言い様に、魔法使いの数人かが激昂して詰め寄ろうとする。
「交渉の余地はないか、錬金術師」
「俺はこの町の代表者ではないからな。ただの一兵卒と同じだ。交渉なるものは、頭に任せるつもりでいる。生憎と、担当者は不在だが」
「………」
片手で金の杖を油断なく構えて、ヒイラギが目を細める。
(地水火風が3人づつか。こんなところで同時にぶつけられたら、城門など木っ端微塵だ。だが………)
もう片手で、背中にくくり付けたもう1本の金の杖を抜いて、地面にそのまま突き刺して、彼は笑い、唐突に唱えた。
『母なる四の一、大地。汝ありのままの姿を、今しばらく留めよ』
それと同時に、
「カザカミ!」
ヒイラギが上空を仰いで叫ぶ。
「風を防げ!」
ぎょっとした魔法使い達が同時に、上空から唐突に舞い降りてきたカザカミに向けて魔法を放つ。すると、上空からカザカミの、鋭い呪文が響き渡った。
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