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『大いなる四の元素の四、風。汝あるべき姿に還れ!』
すると、地水火風の魔法使いのうち、何故か『地』の魔法使い達が同時に硬直する。
「……魔法が、発動しない!?」
ヒイラギが、地面に突き刺した金の杖を横目で見て笑う。
「お前達四人は俺が封じた」
そして、12人のうちの3人から発せられた『風』を、カザカミが空中で押し留める。
「上出来だ、我が弟子よ」
同時に襲い掛かってきた水と炎が、カザカミが押し留めた風に反射されて、空中で混ざり合って一気に蒸発する。そのまま、その水蒸気を突き抜けて、ヒイラギの前に舞い降りたカザカミが、油断なく身構えて言った。
「怪我はない?」
「少々火傷したが、平気だ。むしろ中に怪我人がいる」
そして、カザカミに、彼女にだけ理解できる所作で、伝える。
『100人を切った。交渉を受ける』
『え!?』
『このままだと全滅の一途だ。交渉で時間を稼ぎたい』
『でもヒイラギさん……』
『「土」の3人を封じていられるのはあと数分だ』
12人中3人を封じたままのヒイラギが、金の杖に片手をかけて息を吐く。
『だって、ヒイラギさんが抜けたら、かなり不利だよ』
『カザカミ、お前は残れ』
『………だ、駄目だよ!』
『ライゼン達の同盟軍が来る。だが、間に合わないようであれば、ヤガラミと共に皆を連れて南へと抜けろ』
『………』
『ここから帝国の宮殿まで一週間。俺は殺されないはずだ。少なくとも、しばらくは。どうも、魔法使いが多過ぎる』
『でも………』
馬の蹄の音が響き、当のヤガラミ達の一団が、魔法使い達を取り囲む。
「ヒイラギ殿、いかがなされた?」
動揺を見せない風に努めるヤガラミに、
「司令官殿。少々立ち入った話がありましてな」
年相応以上の落ち着いた振る舞いをしてみせて、ヒイラギが目を細める。悠然と魔法使い達の間を馬で割って通り抜け、
「話とは如何に?」
ヤガラミが聞く。声を潜め、ヒイラギが答える。
「落ち着いて聞いてくれ。こいつらと交渉せねばならない。手勢が手痛く攻撃された」
「何ですと?」
「ライゼン将軍率いるヒサンゴの同盟軍がそろそろ到着する。カザカミは残して行こう」
「………」
「俺は殺されはしない。どうせ黄金だの何だのを生み出すよう、強要してくるだろうからな。そして、宮殿までは1週間かかる。魔法使いは12人。町など一刻で落とせる数だ」
「どうするつもりで?」
ヒイラギが笑う。
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