Chapter18

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 さらさらと流れる砂が、炎と混ざり合って弾けるような光を一瞬だけ放つ。 「まずはこれを口に含め。まだ飲み込むな」  カザカミの目の前に、光を帯びた砂が集まってくる。わけのわからないまま、それを手にとって口に含んだ相棒を満足げに見てから、12人の魔法使いに向かって、背中越しに笑う。 「あと数秒、時間を頂こう。ここにいる、我が子にして戦友、そして家族、ただ一人の弟子で、妻の為に」  いつの間にか、自分の『肩書き』がこんなにも増えていたんだ、と光る砂を口に含んだまま、カザカミが何気なく目を丸くする。 「最高傑作にして、我が全てというわけだ。目を閉じて、唇を開け。この世で一番甘いものを味わわせてやろう」  その場にいた敵味方含めた全員が、思わず声にならない声を上げる。それを感じ取ったカザカミが、しゃがんだまま、思わず回りの皆を見て慌てふためいて、閉じろと言われた目を見開いた。 「え、あ、甘いもの!?」 「安心しろ。ただの錬金術だ、ただの」  むせ返りそうになっているその口元を、素早く左手で塞ぎ、更に反対側の右手で湧き出ていた水を、自分の口へとすくって含んでから、水で濡れたその手で、カザカミの顎を引き寄せる。そして、口の中に含んでいた水を、一気に、唇越しにこのゴーレムの体内に送り込んだ。 「……………砂が逆流した。俺もまだ精進が足りんな」  何をもって『精進』というのかはさっぱりわからなかったが、自分の顔からこぶし一つ分も離れていない場所で、師匠が眉をしかめてそう嘆くのを聞いて、思わずカザカミはそのまま謝ってしまう。 「ご、ごめんなさい………って、そうじゃなくって、ヒイラギさん、今の………何?」 「言っただろう。俺が不在の間、お前に何かがあったら困る」 「な、何かって?」 「人間の間では、これを俗に『唾をつける』と言う」  どこまでが真面目なのかわからないこの師匠の顔と、そんな師匠を見てただ唖然とするばかりの回りの人々を交互に見て、思わず彼女は、頭を抱えながら、ぱくぱくと口だけを開き、呻いた。 「でも、今のって、ヒイラギさんも前にサライナさんに………」 「あれは軽い接触事故だ。気にするな。そういう事もある」 「だって………でも、そういう事『も』って、どういうこと?」 「お前はまだ子供だ。気にしなくても良い」
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