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「ヒイラギさんって、都合の悪い時だけそう言うよね。やっぱ、ヒサツさんが言ってた通り、女の人相手に『つくづく罪作りな』………」
「その言葉だけはいい加減に忘れてくれ、カザカミ」
とうとう、こらえきれなくなったらしいヤガラミが、馬上で盛大に吹き出した。
「ともかく、今のは単に、地水火風を更に加えてお前の体を内部から補強しただけだ。俺が不在の間、お前を強化できる者はいない。これで安心できる」
「あ、そういえば………」
拍子抜けしたカザカミが、やっとのことで立ち上がる。
「ありとあらゆる意味で、お前に手出しをしようとする輩はいなくなるだろう。本来ならば炉があれば良かったのだが、そうもいかない。今ので、お前に与えるべきものは全て与えた」
「与えるべきもの?」
「自分で気付くだろう、我が弟子よ。では、俺は行かねばな」
今度は、いつものように彼女の頭をくしゃくしゃと撫でて、ヒイラギが言った。
「………うん」
「用件を済ませ次第、すぐに戻る」
そして、何事もなかったかのように彼は振り返った。
「随分と待たせたな」
魔法使い達が、顔を見合わせる。
「俺は、男にお望みされるつもりも、拉致されるつもりもない。だが譲歩してやろう。俺は自ら行く」
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