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Chapter19
「つくづく、不思議な方ですな」
「………私も最近、何だかそう思わなきゃいけない気がしてきて、どうしよう、本当に」
ヤガラミとカザカミが、同時に息を吐く。
「不躾な質問ですが、あのようなゴーレムの『強化』の方法があるのですか、本当に?」
「ある……と思うよ。うん、多分。私は作ったことないから、わかんないけど」
思わず自分の、あまり柔らかくない唇に触れて、カザカミが眉を寄せて考え込む。すると、
「いやあ、いいものを見させて貰ったよ、カザカミ嬢」
「お前さんの師匠も、なかなかやるもんだね」
「どうだったかい? この世で一番甘い味は」
一部始終をヤガラミの後ろや、町の門の裏側から目撃していた、ユウガミラの兵士達が笑う。この兵士達も、ヤガラミに習ってカザカミの事を『嬢』と呼んでいた。そんな心強い戦友達に、カザカミは言う。
「あ、味? えっと、あったっけ? びっくりしてたから、よくわかんなかった気がするけど………やっぱりあれって、砂と火と湧き水の味なのかな」
「そりゃあ、いかにもゴーレム好みっぽいねえ」
皆が陽気に笑う。同じように笑いながらも、たった一人で宮殿へと乗り込んでいった師匠の事が心配でたまらないらしいカザカミに、
「言葉と表情が、随分豊かになりましたな。カザカミ嬢」
「え、私?」
「そうですとも」
師匠とほぼ同年代らしいこの隊長が、そっと笑いかける。
「ここ最近は、殺伐としていましたからな。それもあるでしょうが……」
そして、カザカミを見る。
「私も心配ですよ、ヒイラギ殿が。ですが今は、彼を信じるしかあるまい、そうでしょう?」
「うん。そうだね。ありがとう、ヤガラミさん」
おそらくは、ここの戦士達をも安心させる効果と、カザカミの心を和らげる効果の双方を狙って、先程のような行動をわざわざ皆の前で取ったのだろう、とヤガラミは考える。
「そういえばそろそろ、ヒサンゴからの援軍が到着します」
「うん」
カザカミが、ヤガラミを見て黙る。
「行きたいのでしょう?」
「…………」
「あちら側が、無事に彼を帰してくれる保証はありませんからね。よろしい。許可しましょう。ヒサンゴの援軍が到着したら、という条件付きで」
「…………でも」
「皆も許してくれるでしょう。我々にとっても、彼は重要な人物です」
「ありがとう」
「放っておくと、何を唐突にしだすかわからないですからね」
思わずカザカミが笑う。
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