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「他の? 成る程、この国にも錬金術師がいたのか」
自分とは相性が悪そうだ、などと考えながら、彼は言ってやる。
「永遠不滅の命を求めて研究中か、それとも黄金を日々生み出そうとしているかのどちらかか。世の王者は所詮、我々の力をその程度にしか見ない」
魔法使いの頭領格らしき男が笑う。
「そう嘆くな。だからこそ、その術に長けたお前をこうして呼んだわけだ」
「永遠の命、財力、とくれば次は無敵の軍隊だろう。………ゴーレムか」
「さすがに聡いな」
「品質と安全という美徳を持ち合わせ、今や王侯貴族の引く手数多に育ってくれた、俺の可愛い娘のことか。菓子折寄越そうが三つ指突こうがお前達なんぞにはやらんぞ」
魔法使いに向けて堂々と笑い返し、ヒイラギは続ける。
「軽口は命を軽くするぞ、錬金術師」
「元々さして重くもない命だ」
宮殿の磨き上げられた廊下に、12人と自分を含めた足音が響く。手に枷をはめられた自分へと、宮中の侍女やら奴隷やらが珍しそうに振り返る。
「アシナダ、控えの間にいる錬金術師達を呼んでこい」
「あの人達はどうも苦手なんですよね……」
「御託はいい。さっさと行け」
「は、はい」
歳若い魔法使いが、首をすくめて返事をし、慌てて歩き去っていく。
「生憎、我が宮殿には鉄製の牢屋しかなくてな」
「大いに結構」
「錬金術師をその様な場所に閉じ込めるほど、我々も愚かではない。死んでもらっても困るが、そのような態度も気に食わん」
「拷問か」
「我が君の前で、そのような高慢な態度が取れぬようにもな」
ヒイラギが、溜息をついた。そして、投げやりに笑う。
「どうぞ、ご随意に」
空中から舞い降りる彼女に向かって、
「来たぞ、射落とせ!!」
強力な弩が放たれる。それを難なく両腕で叩き払って、土煙を上げながら着陸し、
『我が母なる四の一、大地よ、私の爪となれ!』
片手で地面に勢い良く爪を立てる。轟音と共に地面が五つに裂け、悲鳴があがる。
「カザカミ嬢、魔法使いが来ます!」
どんな盾をも真っ二つに切り裂く驚異の剣を手に、ヤガラミが叫ぶ。
「皆、下がって!」
ヒイラギが残していった、対魔法用の布地を、その石質の素肌の上から包帯のように体に巻きつけたカザカミが、硬質な唇を噛んで振り返る。
「そろそろ来ると思ったんだ……」
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