Chapter21

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 残念そうに、アシナダが呟く。 「じゃあ、あのゴーレムは、どうして動くんです? そもそも、ゴーレムがあのように意志を持ったり、喋ったりすること自体、普通はありえないのに。あなたが操っているようには、見えなかったんですが………」  どうやら、人並み以上に好奇心が旺盛らしい、この若者を見て、ヒイラギが笑う。 「然り。あり得ない事だ」  アシナダが、血にまみれてぼろぼろになった衣服を、かろうじて身に纏ったこの壮年の錬金術師を見て、目を瞬かせる。 「だが、時に、この世ではあり得ぬことが起きる。我が愛し子の優しき魂は、俺にはあまりにも過ぎた贈り物だ」 「………」  ヒイラギが、瞼を閉じて言った。 「そろそろ、第8の部屋の時間だ。話していたら気が紛れた。礼を言おう、アシナダ」  空になった水杯が返される。 「もう、8番目ですか!?」 「黄金と不老不死とゴーレムの秘密を吐かせる為には、俺の都合など考慮してはくれないだろう。死なない程度のおもてなし、痛み入る」  微かに足音が響いてくる。 「急げ。お前まで三十六回廊に放り込まれるぞ」 「………また、何か持ってきます」 「否、その必要はない」 「いや、ですが…」  アシナダが、真顔で言った。 「……僕には、こういうことしか出来ませんが、すみません。捕まえている側なんで、何も言えませんが……次も、また何か持ってきます。僕は、まだあなたから、色んな話を聞いてみたい。いや、聞くべきだ、と思ったんです」  それだけ告げると、彼は頭を下げてから、急いでその場を立ち去っていく。しばらくして、いつもの番人達が姿を現した。 「お勤めご苦労」  もう顔見知りになった、この忌まわしい拷問係に向かい、初日と何ら変わらない鷹揚な態度でヒイラギは、一言だけ言ってやった。 (目的は、私………)  人間よりも遥かに強固な体を持ち、自分の意志で自由に動け、しかも主には必ず忠実であるゴーレム、すなわち自分はやはり、 「戦闘兵器、なのかな」  そう呟いて、大きく息を吐き、自分がそれ用に生まれてきたのはまぎれもない事実だ、とカザカミは遥か上空で目を細める。 「ヤガラミさん達は、そうじゃないって言ってくれたけど………」
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