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Chapter22
「そうか。…………やはり来たのか」
横たわったまま、ヒイラギが片目を開けて呟いた。
「場所を変えるそうです」
「まだ18部屋目だ」
「闘技場ですよ。あなたを囮にして、あのゴーレムを捕らえるそうです。それに、先輩達が………」
「どうせ、俺の弱みはあの愛し子だ、とか何とか吹き込んだのだろう。愚か者どもめが」
「よくわかりましたね。……王も、興味を示されたみたいで、自ら見てみたいとのことです」
アシナダが、格子の向こうから告げる。
「………見世物にするつもりか」
上半身を起こし、口から血の混じった唾を吐き出して、ヒイラギが眉をしかめる。
「あの闘技場には、この大地の各地で狩ってきた様々な生き物が捕らえられています」
「………」
「錬金術師達にも、何やら話してました。あまり聞き取れなかったんですが」
「そうか」
「あなたがあまりにもしぶといので、王も魔法使い達も、とうとうしびれを切らしたみたいです」
「それほどまでに黄金が欲しいのか」
「戦を維持するのには、費用がかかりますから………」
アシナダが、大きく息を吐く。
「それに、失礼かもしれませんが、僕から見ても、あのゴーレムのお嬢さんは、非常に興味深いですよ」
「カザカミか」
昨日まではただ単に「ゴーレム」と呼んでいた筈のカザカミに、いつの間にか「お嬢さん」を付けながら話すアシナダを見て、ヒイラギが何ともいえない顔で、少し笑う。
「………魂を、持っているんですよね?」
アシナダが、もうほとんどぼろ切れになった、血まみれのローブを纏い、壁にもたれているヒイラギに、いつものようにこっそりと水杯を差し出しながら、聞いた。
「そう言ったはずだ」
「あなたが、新しい魂を造った、ということなんですか?」
ヒイラギが、息をひとつ吐いてアシナダを見る。
「祖父の言葉を思い出しました。大地における全ての理を求め、生き物の魂の秘密を解き明かし、命の起源に迫る、それが至上の目的だと。………あなたは、もう極めたんですか?」
「質問の多い奴だな」
「すみません」
ヒイラギが、しばらく黙ってから問い返す。
「人の魂はどこから来るか知っているか?」
「え、いいえ、わからないです」
「俺もわからない。カザカミとてそうだ。彼女には魂がある。カザカミを生み出したのは俺の技術だが、彼女の魂がどのように、どこから生みだされたかは、親たる俺も知らない」
アシナダが、目を瞬かせる。
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