Chapter23

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Chapter23

 不純物の大量に混じった鎖と、荒いロープで、闘技場の中央に縛り上げられる。その回りに、自分の同業者らしき男達が立った。場内は既に、観客で埋め尽くされている。賭金が回っているらしく、半分屋根のついた闘技場内に、半券売りの声が反響する。 「そろそろ主役が登場する」  新たに呼ばれてきたらしい錬金術師の一人が言った。ヒイラギが、目を細めて相手を見る。 「立たされているのも苦痛なはずだ」 「………」  縄と鎖がぎりぎりと素肌に食い込む。 「金を作る、とさえ言えば、身体回復の術をかけてやるそうだ」  錬金術師たちの顔に、嫉みの表情が浮かぶ。 「お心遣い、痛み入る」  血が流れすぎたのか、頭が重い。 「もう少し痛めつけておかねばならぬか。やってきたゴーレムと共に、ここから逃げ出されても困る」  錬金術師が、鎖に手を触れる。途端に、鉄製の鎖が真っ赤に光りだし、一気に激しく熱を帯びた。全身が焼ける痛みに耐えかねて、ヒイラギは短い呻き声を上げる。華やかな衣装を身に纏った、常に娯楽に飢えていたらしい観客達が、それを見て嬌声を上げる。肌の焼ける嫌な臭いに顔をしかめながら、錬金術師達が言った。 「そのまま、そこで見ているが良い」 「………」 「王も、魔法使いも、黄金と兵器の為に貴様を生かそうとするだろう。だが、我々は容赦はせぬ」  ヒイラギの意識が沈んでいくと同時に、自分が連れてこられた闘技場の入り口の扉が、轟音と共に吹き飛んだ。  飛び込んだ途端に沸きあがった歓声に、一瞬気取られてカザカミは立ち尽くす。途端に、上の方から呪文が響く。 『下竜召還!』  自分の真上に、影が差す。 「あれは………」  翼を持った、細身ながらも凶暴な、下位種の竜が、闘技場の上空の雲を突き破り、凄まじいスピードで急降下してくる。 (呪文が間に合わない!)  反射的に真横に転がって、硬く大きな爪を交わし、 『四の一と四、共に舞え!!』  そのまま、砂嵐を起こして竜の視界を防ぐ。 「ヒイラギさん!!」  一瞬だけ見えた、中央の人影達へ向けて、カザカミは叫ぶ。だが、返事はない。走り出そうとした途端、真横から竜に激突されて、彼女は横なぎに吹き飛ばされた。大地に受身を取って、足の短剣を抜き払い、素早く唱える。 『二十六にて成り立つ剣、猛き四の三、炎を纏え!』  真っ赤に燃え上がった鉄剣を、両手に逆手で構えて、 「ごめんなさい」
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