Chapter24

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Chapter24

 基本的に疲労が存在しない筈のカザカミが、大きく息を吐いて膝をつく。際限なく現れる、意志のない同族が、再び距離を狭めてきた。 (操り手の錬金術師にも、近づけない………)  錬金術師の隣には、魔法無効化呪文を放つ魔法使いが油断なく身構えている。そして、同族達から少しでも離れようものなら、問答無用で彼女の体を侵食してしまう赤い光が容赦なく彼女に襲い掛かってくる。 「立たないと……」  意志をもたない同族と戦う事が、こんなにも辛いとは予想だにしなかった。既に、3体ほどは大地に還していたが、相手の数は無尽蔵だった。膝をついた真横が唐突にぼこり、と盛り上がり、彼女は一瞬バランスを崩す。 『四素封印、大地を射抜け、我が光よ!!』  途端に放たれた赤い光が、後ろの同族の一体を破壊、貫通し、自分の背中に直撃する。残っていた翼が根元から吹き飛んで、溶け去った。武器で叩かれても痛みを持たないカザカミの背中に、強烈な激痛が走る。声にならない声を上げ、吹き飛ばされて、正面から地面に突っ伏したところに、同族が上から押さえ込みにかかる。両手両足を、4体の同族に、強烈な圧力で押さえ込められて、カザカミは呻き声をあげた。その口を、もう一体の同族に塞がれる。場内が歓声に包まれ、そして、静まり返った。 「見事な戦いぶりだったな。石塊よ」  見覚えのある、魔法使い達の長が歩き寄ってくると、彼女に赤く光る杖を突きつけた。 「同族には勝てまい」  意志のない瞳の同族達が、自分を見る。口を塞がれたまま、カザカミが魔法使いを睨み返す。 「お前は女か。石塊」  首も動かせないまま、相手を見返す、この闘技場内でもっとも小さなゴーレムを見ながら、 「その石の中に、辱めを感じる心があるか否か、先程まで話題になっていてな」  魔法使いが至極真面目に言う。そして、赤い杖で闘技場の一点を指し示して、言った。 「その件に関し、我が王が大変興味を示している」  その言葉を理解するまでに数秒を要した後、カザカミが怒りのあまり、顔を真っ赤にしてもがきだす。結界の中のヒイラギが、目をゆっくりと細めて、魔法使いが指し示した先に視線を投げる。そして、黄金と花々で飾り立てられた一角に、いつの間にやら、屈強そうな兵士や魔法使い達に囲まれて、王冠を頭に頂いてこの場を眺める人物が、美しい女を回りに侍らせながら、こちらに視線を投げていた事に気が付いた。
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