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「………ならばこう答えるが良い。俺は人の心を持った石の方が好きだ。石の心を持った人よりはな」
途端に、緑色の結界が、真っ赤に光りだす。
「動けば、お前の愛し子の命は保証せぬぞ」
「失せろ豚めが」
もう何十年も封印していたはずの激烈な怒りを、言葉に滲ませながら、彼が片手を伸ばす。魔法使いも、杖をカザカミに向けて唱える。
『四素封印、砕け、大地の恩寵!』
石を砕く赤い光が、虚ろな眼差しを宙へ向けたままのカザカミを包み込んでいく。
『四の三、猛き炎。唱和し、唸れ、焼き尽くせ』
緑色の結晶が、唐突に燃え出した。そして、荒れ狂う波となって、魔法使い達に襲い掛かる。
『水よ盾となって我が身を守れ!』
水と炎が激突して、水蒸気が立ちこめる。
「愚か者め」
水蒸気の向こうから、ヒイラギの声が低く響く。
『空を駆けし四の四、風よ、舞い上がれ』
熱を帯びた水蒸気が、風に煽られて一気に、半分開いた闘技場の屋根から上空に舞い上がる。
『そして天より降れ、冷たき四の二、水よ……』
上空の空気が、一気に冷やされたところに、熱を含んだ水蒸気が風に乗って舞い上がっていく。それと同時に、空気が突然、獣が唸るような不気味な音と共に鳴動し始めた。
「まさか………」
「言ったはずだ。俺は元素を無駄にしないと」
開いた屋根の上から、この世のものとは思えない、一寸先も容易に見えない強烈な雨が降り注ぐ。突然沸き起こったこの嵐に、観客席が大混乱に陥った。そして、
「俺の答えだ、王よ」
観客席の一角の、飾り立てられた貴賓席に向かって、彼は目を細めて言い放った。
「望みどおり、黄金をくれてやる」
次の瞬間、耳を聾する轟音と共に空から落ちて来た黄金色に輝く雷が、花で飾られた貴賓席とその周辺を、目も眩む閃光と共に木っ端微塵に吹き飛ばした。回りの兵士達が、彼らの主を守る暇も与えぬまま、空からの『黄金』が次々に、情け容赦なく、そして無造作に、屋根を破壊する音と共に降り注ぐ。悲鳴と、恐怖、そして滝のように降り注ぐ雨風の音と共に、混沌が闘技場内を支配する。
「そこから消えろ。粗悪品どもめ」
更にヒイラギは、ゴーレム達を目を細めて睨みつける。途端に、彫像のように5体のゴーレムが硬直し、鈍い音が響く。
『母なる四の一、大地に還れ』
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