692人が本棚に入れています
本棚に追加
揶揄うような台詞に、フレデリックは閉じていた目蓋をあげる。すぐそこにあるロイクの瞳をまっすぐ見つめた。
「そんなものをするくらいなら死んだ方がマシだね」
心の底から本心を吐き出せば、鉄の塊に頤をくいと持ち上げられる。
「僕にこの綺麗な顔を吹き飛ばさせる気かい?」
「望みとあれば、そうすればいい」
再びフレデリックが目を閉じようとした瞬間、ドアをノックする音が室内に響く。あっさりと銃口を下げてロイクが呟いた。
「クリスか…」
ドアを開けるまでもなく来訪者を特定したロイクは、手に持った銃を二丁ともフレデリックの服の中へと戻した。
「ロイ…」
「言い忘れていたけれど、僕は十一年前の復讐をしに来た訳じゃない」
そう言い残してすたすたと部屋を横切ったロイクに、フレデリックは何も言い返すことができなかった。
ロイクがドアを開ければ、その奥の通路に幾分か距離をとってクリストファーが立っている。クリストファーもまた、室内にフレデリック以外の気配を察していたのだろう。
「やあクリス。久し振り」
「ロイ! 本当に久し振りだな。十年もどこへ行ってたんだ?」
「それよりも、君が元気そうで何よりだよ。僕が最後に見た君は……」
「ああ、そう言えばそうだな。おかげさまで、今はこの通りさ」
最初のコメントを投稿しよう!