4人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「これから、張り込み調査をします。」
「は?」
それは至極真っ当な反応であろう。いきなり家に押しかけてきて自宅で張り込み調査をするだなんて。
しかし、
「やっぱり、探偵ってそういうことするんですね! 本物もやるんだ! すごいです!」
目を輝かせている。めちゃくちゃ目輝いてる。何が凄いのかもよくわかんない。
「うーん。私はやるのですけれど、探偵は探偵でも個々人によりますからねえ」
探偵は私の方をちらりと見た。そして、にやーっと笑った。
「それではー? 私はこの辺りで」
「え? どこか行ってしまうんですか」
「ちょっと、ね。買い物にですよ。勿論戻ってくるので待っててくださいね」
探偵は出かける前に私に向かって
「私は2時間程いなくなるので、ね」
と言ってにこーっとしてから出て行った。にこーっと。
結局、何が言いたかったのだ。
数分後に三上実美は手洗いに行き、その後も探偵が買い物から戻ってくるまでトランプや将棋などレトロな遊びをしていた。張り込みであるのにも関わらずそれを忘れて普通にお泊まり会的な雰囲気を楽しんでいた。
2時間後、それこそぴったりの時間に探偵は戻ってきた。
「お待たせいたしましたね」
少し申し訳なさそうな笑みを浮かべながら両手に持ったビニールをこちらに見せてきた。
「これは?」
「あんぱんとパック牛乳ですよ」
そんなことは見ればわかる。私が聞きたかったのは、何故わざわざ2時間も席を外してどこかへ行ってあんぱんとパック牛乳を3人分も買ってきたのかという話だ。
「そりゃあ、だって、張り込みといえば、あんぱんとパック牛乳でしょう」
呆れるような理由だった。しかし、それを買うだけならば、2時間も席を外す必要はないはずだ。近くのコンビニで買ってすぐに帰って来ることができただろう。そんなことを問うと、探偵は笑顔でろくでもない答えを返してきた。
「この街で一番、あんぱんとパック牛乳を安く買えるコンビニを探して買ってきたのでね。2時間かかってしまいましたね」
最初のコメントを投稿しよう!