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「同じだろうか、違う大学だろうが、あたし達の友情はなくなったりしないでしょ?」
「まおちん、カッコイイ」
「惚れんなよ」
「大丈夫、タイプじゃないから」
バカなやり取りをしている間も、拓也君は友達や女子生徒と楽しそうに最後の時間を過ごす。お互いに最後まで高校生ライフを全うし、時間を忘れるくらい話し続けた。
(まおちんみたいに、正直に気持ちを言えたらいいのに……)
卒業して、違う道に進んでも恋人になれますか?
私は地元の大学、彼は東京の大学。海を渡り、長い道のり。遠い土地での恋愛――遠距離恋愛なんて、私にはムリだ。
スポーツ推薦とかしたことがないからわからないけど、きっと大変なことだと思う。運動と勉強を両立させて、彼は進みたい道を行く。そんな隣を私が歩いていいんだろうか? 拓也君が困った時、苦しんだ時、悲しい時……すぐ傍にいられない私が、彼の隣を独占していいんだろうか?
「そろそろ帰ろっか?」
まおちんに腕を引かれて、ハッと我に返る。そんなに詰まってない脳ミソであれこれ考えたって、私の中で答えは出なかった。名残り惜しそうに視線を巡らせ、最後の一年間を過ごした教室と拓也君を見つめる。まおちんには『いいの』って言ったくせに……意外と私って女々しいな、と新事実を突きつけられた気がした。
教室の横を通り過ぎる際、彼と再び目が合う。勝手な妄想だけど、拓也君も私に何か言いたそうな表情をしていた――ように見えただけかもしれない。私の視線に気付いたからこっちを見たのかな?
どっちにしても、私の思い過ごしか考え過ぎか、妄想でしかない。
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