第一章 サラマーとパニとの対話〈二〇五〇〉

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第一章 サラマーとパニとの対話〈二〇五〇〉

- 零 「ゲームをしてたんだ。」  太陽が沈む。 「うん。」  光が濁る。 「それだけだよ。」   暗闇が迫る。 「うん。」 「ただそれだけ。」  止まることはない。 「うん、知ってる。」  そろそろここは、教室に浮かぶのは、彼女と私の、まっくろな、輪郭だけになる。 「それだけのことだよ。」  本当は。 「うん、知ってる。」  震えるほどに恐いのだ。 「じゃあ、帰るね。」  怖いのだ。 「うん。」  行かないでほしい。 「じゃあ。」  行かないで。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何を。」 「・・・ぇ。」  ゆっくり、立ち上がり、そして止まった彼女の、短い髪なのに、しかしそれでもまみれた彼女の表情は見えないけれど。 「本当は、何が聞きたいの。」  そのか細い声が、やっと久しぶりに、彼女のものだと思えた。  だから。 「・・・知ってる、ことを。」  言うんだ。 「知ってることを、教えて、ほしい。」 「知ってること、ねぇ。」  だから私は。 「聞きたいんだ。」 「だから・・何を。」 「ゲームのことを。」 「・・・ゲーム。」 「・・うん。」  彼女に。 「ゲームのことを。」 「・・・・・・そっかぁ。」 「・・うん。」  彼女に、彼女、だったものに、聞くんだ。 「・・・・・・・・・ライはさ。」  彼女の口が開き、私の名を呼んだ。  それに瞬時に反応するは、私が私という存在であることを証明している。 「うん。」  だから。 「ほんと、うんざりするほど、人間だね。」  立ち向かわなければ、ならないのだ。
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