『バレンタインも過ぎた日に ~ White day ~』 ※R15

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 フロントの青年、森口に見送られ、狭いエレベーターでテナントの一階へ降りた。チン、と涼やかな音で分厚い扉が開き、遠く聞こえるピアノアレンジのオールディーズへ足を向ける。 「……石鹸チョコレート?」  ビルの出入り口に間口を広げたバラエティショップ。  行きには気付かなかった、甘い香りに目を向けた。  通路に面したブースの、デコレートされたワゴンの中に、青と白でデザインされた箱がびっしりと敷き詰められていた。  その上に置かれた籠には、華やかなポップを添えた、内容物の見本品だろう、ビニル包装された白い塊が三つ。 『とっても柔らか! 体温でとろけます(はあと)』  バスグッズ、と併記された下には、美肌、保湿、温浴効果アップ、リラックスなどと効能が謳われている。  なるほど、アイデア商品なのだろう。  石鹸にしか見えないそれをしげしげと眺め、小さな箱を一つ、手に取った。  裏返して読む説明書きには、『本品はチョコレートです、そのまま食品としてお召し上がりいただけます』と、但し書きがある。 「――――」  ふと浮かんだ虎ノ門の、最愛の施術師の柔らかな男前顔に、新堺は口の端を引き上げた。    * * *
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