『バレンタインも過ぎた日に ~ White day ~』 ※R15

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 石鹸、と偽り持ち込んだ白い塊が、温かな浴室に、甘い芳香を漂わせている。 「チョコなんだよ」 「そうなんですか?」  目を丸めた男の素直な表情に、新堺は満足の口角を上げた。  この男、端来勇也は、何事もソツなく気の利く良い男だが、端正な面を持つわりに中身は素朴で好感がもてる。 「舐めて」 「え」  嫌そうに目元が寄った。  平和を好む保守的ななイケメンゲイの正直な反応に、まあそうだよなと納得し、溶け出した石鹸もどきの表面を舐め上げた。 「甘い」 「あまり舐めないほうが。胸焼けしますよ、新堺さん」 「だな」  舐めて。  二度目の要請に、勇也の薄い口元が嫌そうに引き結ばれた。  甘いものは互いに得意でなく、逃げ道を探る男前の困惑の眼差しも、理解できなくはないが。  右の中指を白い表面に滑らせ、もったりとした雫を集めた。  白い粘液が太い指を伝い落ち、血管の浮く甲に垂れていく。 「――――」  向き合う瞼が伏せられた。  悩ましげに寄った眉がふるりと震え、傾いた頬骨に喉を鳴らした。  手首の向こうに唇が触れ、ちゅうと、白い雫を吸い上げる。  熱い舌が肌を這う。  丹念に、白い雫を舐めあげる。 「甘いだろ」 「――甘いですよ」     
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