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温度は嘘つき
ざくっ、ざくっ、ざくっ
夜も更けた墓場に、不釣り合いな鈍い音が響く。
固い地面にシャベルを突き刺し、浮いた土を横へよける。そうして少しずつ深みを増していく穴を満足そうに見つめ、少年はまた楽しそうにシャベルで土をすくう。
ざくっ、ざくっ、ざくっ
そんな少年を見守るのは、一人の少女。
だがこちらの少女は少年のそれとは打って変わって蒼白な顔を血で飾り、怯えた瞳でただ少年を見つめている。
ざくっ、ざくっ、ざくっ、ざ、がきんっ
シャベルを土に突き刺す音の中、高い金属音が墓場に響いた。
それに少年はぱっと顔をほころばせ、ぺしゃりとその場へとうずくまる。
「あった! あったよ!!」
誰に聞かせるでもない歓喜の声と共に、少年はようやく見つけた「それ」に頬ずりをする。
だがそれも一瞬の事だ。
すぐに本来の目的を思い出した少年は改めてシャベルを持ちなおすと、また先端を地面へと
突き刺す。
今度は先ほどのように、ただがむしゃらと掘るだけではない。
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