温度は嘘つき

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「いや、あんた引っ張りすぎ~」  ぎゃはは、という下品な女性の笑い声が、静かな道に反響する。  本通りから一本外れたこの道は、総じて人の通りが少ない。静かなこの道をマリアは愛用していたのだが、今日はどうにも間が悪かったとしか言いようがない。  その間も聞こえ続ける話し声に、マリアは痛いぐらいに手をぐっと握りしめること。 「なんでもさ、葬式やってしばらくしたぐらいに? 墓場行ったら、死体を掘ってる子供がいるんだってよ。んで、なーんか俺の聞いた話だとその掘り出した死体を、その場でバリバリ食っちまうんだとか」 「ちょっ、何それ~! 絶対うそじゃーん! ありえないって~」 「いやこれ真面目に怖くね? 俺、もうちびりそうなんだけど」 「メンタル弱っ!」  背後の二人との距離が、少しずつ距離を詰められていく。 当たり前だ。マリアは先ほどから、一歩も動けていないのだから。  ――離れないと  震える足を叱咤し、内心だけで自身を奮い立たせる。  この声から離れて、今すぐ家に帰る。そうすれば今日も今日とていつもと変わらない、ありふれた一日に出来る。こんな所でぐずぐずしている場合ではない。     
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